「主があなたを祝福し、あなたを守られます。主が御顔をもってあなたを照らし、あなたを恵まれます。主が御顔をあなたに向け、あなたに平安を賜わります。」(民数記6:24-26。ルーテル教会礼拝式文より)

新年おめでとうございます。この一年も皆さまの上に天の祝福が豊かにありますようお祈りしながら、新年のご挨拶をさせていだたきます。

藤枝中学の三年の時に私は担任の先生から「一期一会(いちごいちえ)」という言葉を教わりました。先生の名は赤堀正巳(あかほりまさみ)。画家でもありました。この言葉は茶の湯で用いられる言葉で、「目の前に座っている客人との出会いは生涯に一度限りのものかもしれない。だから、悔いのないように心をこめてもてなせ」という意味であると学びました。赤堀先生はこれは大切な言葉だから生涯忘れないようにと繰り返し語られたのです。味わい深い良い言葉を教えていただいたと今でも感謝しています。先生もまたそのような思いをもって教壇に立ち、生徒と向き合い、絵を描きながら日々を大切に過ごしておられたのでしょう。

英語でその語は字義通りには ”One moment, one encounter.“ となります。さらには、”Treasure every moment, for it never recurs.” という美しい意訳もあります。訳すと「毎瞬毎瞬を宝もののように大切にしなさい。なぜならそれは二度と生起しないのだから」となりましょうか。「今ここを大切に生きる」という意味で私の座右の銘の一つでもあります。

この二年間、私たちは新型コロナウィルスのために様々な制約を受けてきました。皆が手探りの中、先の見えない辛くしんどい日々を過ごしてきたのです。一年前と比べると、少しずつですが明るい兆しも見えてきました。ウィルスについての有益な情報は世界中で共有され、治療法についての経験知も増え、ワクチン接種も進んで薬も開発されてきています。しかしまだまだ終息には至っていません。歴史を振り返ってみると、感染症は突然始まり突然終わります。それにしてもいつになったら私たちはこのトンネルを抜け出ることができるのでしょうか。果たして出口はあるのでしょうか。

岸田首相が所信表明演説で引用しておられましたが、私の好きなアフリカの諺があります。「もし速く行きたいのであれば、一人で歩きなさい。しかし遠くまで行きたいのであれば、誰かと一緒に歩きなさい。」 “If you want to go fast, go alone. If you want to go far, go together.” 味わい深い言葉ですね。助け合う仲間がいればこそ、確かに私たちは遠くまで歩いてゆくことができるのです。

時がよくても悪くても、私たちはこの新しい年も、しぶとくしなやかにめげずに、共に希望を見上げて歩んでゆきたいと念じています。「今、ここ」に与えられている一期一会の絆を大切にしてまいりますので、私たちるうてるホームのことをも祈りに覚えていただければ幸いです。また、皆さまの上に天よりの祝福をお祈りいたします。

るうてるホーム理事長・チャプレン 大柴譲治